厳選された生命保険 相談
家族がうまくいっている場合それは幸福ですが、そうでない場合は軋轢やすれちがい、そして絆の喪失といったことを、日々あからさまに意識せざるを得ない状態になったのです。
けれど私たちは「食」という行為自体を手放すことはできません。
ここに家族をもう一度つくりなおす手がかりがあるかもしれません。
現代、コミュニケーションは情報化、ハイテク化が進み、この電子技術をベースにして「高度化」しています。
家族のコミュニケーションもケイタイ、パソコンといったハイテクコミュニケーションのなかで再編されようとしているのかもしれません。
これにたいして「食」を媒介としたコミュニケーションは、いわばローテクコミュニケーションです。
それぞれが面とむかい、時間と空間と料理を共有しなければはじまらない、太古から営まれてきたコミュニケーションが「食」なのです。
いつ、だれと、どこで、なにを食べるのか、そこに家族はいるのか?私たちはいま、このローテクコミュニケーションを見直す時期にきているのかもしれません。
書斎住まいに書斎がほしいという声が最近ふえています。
あるハウスメーカーの新築住宅にはほぼ一~二割の割合で書斎がもうけられています。
そのメーカーでは4DK、5DKが新築住宅の主流というから、きっと書斎をつくる余裕がある広さの住宅なのでしょう。
それでも三割というのはかなり多い数字だといえます。
かつて家をつくろうというとき、書斎など夢のまた夢、現実には考えられませんでした。
なぜいま書斎なのでしょうか。
背景のひとつに「豊かな」高齢化社会があります。
定年後「読書三昧で暮らす」「自分史を書く」「趣味をきわめたい」と考える人たちには、家族にじゃまされず没頭できる書斎は欠かせません。
人生の後半戦に入って、「いよいよ自分のために時間を使える」とはりきっているようすがうかがえます書斎は男の夢などという言葉があります。
個室で思う存分知的活動に集中する。
あるいは趣味に没頭する。
そうした能動的なイメージで書斎は見られていました。
けれど、最近は会社をやめたとたん自分の居場所がなくなるという不安から書斎を望む人も少なくありません。
居場所というよりも、もっと具体的に自分のデスク、席がほしいという願望です。
こうした場合「では書斎でなにを?」と問われてもさして具体的なテーマがあるわけではないので答えに窮します。
けっきょくその後に、書斎は書庫というにすぎなくなり、有効に活用されないまま、という例も山てきます。
いま空き部屋のある住宅がふえています。
郊外の七〇年代から八〇年代にかけてつくられた住宅街などには、そうした家がとてもたくさんあります。
子供たちが自立して家を出る。
その子供部屋が空き部屋になるのですく欧米のように住み替える環境が整っていれば、家族のサイズに合わせて家を変えることができます。
大きな家から小さな家に移れば余禄が生まれるので、それを老後の趣味や生活の充実にあてるというやり方もできますが、残念ながらこの回ではそれは無理です住宅の寿命が非常に短く、外観や間取りの流行がめまぐるしく変わったので、古い住宅は陳腐化します。
日本の住宅は建ってからすぐに価値がトがりだすといいますが、アメリカの住宅では住まい手が日曜大工で手を入れて、買ったときよりも高く売れるということもよくあります。
けれど、日本では住宅の中古市場というのが成立していない。
だから、一度手に入れた住まいに居つづけなければなりません。
そこで家族のサイズにあっていない家に住みつづけなければならない。
かつては「挟すぎる」という悩みばかりでしたが、最近は「広すぎる」という悩みもでてきています。
そこで空き部屋を書斎にかえてみるということになるわけです。
このようにスペースに余裕があり、書斎を個人生活を充実させる道具として使ってみるのはいい試みですが、なかにはいささか首をかしげるような考え方もあります。
ある講演会場で不思議な意見を耳にしました。
それは六十代とおぼしき男性でしたが彼はこういいました。
「父親の権威がなくなったのは家に書斎がないからではないか」父親が書斎のなかに入って読書したり書き物をしたりするところを母親や子供に見せることがないので、家族はただテレビを見たりビールを飲んでいるだらしない父親像しか知らない。
それで権威がなくなるのだ。
そういうことらしいのです。
たしかにたまに早く帰っても、野球中継を見ながらビールを飲んでいるだけの父親では権威を保てない。
それはよくわかります。
権威づけに書斎が力になるかどうか、そしてほんとうに「権威」なるものが必要なのかどうかはさておき、父親と権威について少し考えてみましょう。
父親の「力」が戦前とくらべて落ちたのは事実です。
なにしろ家父長制が崩壊したのだからそれはあたりまえです。
もともと家族制度によって守られていた父親はたとえどんなに能力がなくても、尊敬に値しなくとも「権威」者たりえた。
そういう時代が過去になったとき、父親は生身の人間性で勝負しなければならなくなった。
ここで「権威」を保つのは非常にむずかしいといえます。
六〇年代の高度成長期、そして低成長時代に入っても、日本はまがりなりにも「成長」を維持してきました。
どんなに会社人間で家庭を顧みなくとも、会社から持ち帰ってくる家庭運営のための「資金」はふえていく。
そういう時代には父親の中身が深く問われることも少なかった。
けれど、ここ十年のように右肩上がりどころか右肩下がりの経済になり、いつ倒産解雇という悲劇に見舞われるかもしれないとなると、その「神通力」も適用しません。
N放送文化研究所が二〇〇〇年に行った『放送研究と調査』の「現代の父親像」調査では、夫にたいして不満をもっている妻は約六割で、その理由のうち「自分の仕事や趣味にしか関心がない」が三割、「何を考えているかわからない」「帰宅が遅い」がそれぞれ二割という結果が出ています。
さらに夫に「子供にたいして権威ある父親」であってほしいと考える妻が八割を超えています。
けれど当の父親はどうでしょうか?ある新聞の調査があります。
「父親は中心的な存在か?」という設問に、父親世代の四十代男性の七割近くが「そう思わない」と答えています。
つまり父親自身も意識のなかでは家庭の中心からすでに「おりている」のです。
この調査は「父親の権威がない」という状況を嘆くのは、父親ではなくじつは妻だという現実をしめしています。
「しっかりしてよ、お父さん」というわけです。
けれど、その「しっかり」とした権威は自分(妻)に向けてほしいのではなく、もっぱら子供にたいしてです。
威厳をもって子育てできる夫を期待しているのです。
権威ある父親というのは夫の願望ではなく子育てに不安を持つ、あるいは苦労している妻の側にある強い思いといえるでしょう。
けれど子育てに書斎は必要ありません。
期待されているのは書斎にこもる父親ではなく、リビングルームで子供に向かう父親なのです。
夫を不満に感じているのはどんなところか自分の仕事や趣味にしか関心がなし、帰宅が遅い子供を注意したり、しかったりして、妻たちは子供と向き合う父親を求めているようだ残念なことに、書斎にこもって読書をしている、書き物をしている親の姿を尊敬のまなざしで見る子供など、いまの時代ほとんどいません。
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